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旅人 JFNアナウンサー 井門宗之

東京をタテに楽しむ!!Vol,1

     
 
江戸の粋を楽しむ


男としてはこれを極める事によって一つ新たなステージへ登る事が出来る気がする(←この辺がミーハーな井門)。
ちょっと声に出してみよう。『粋』『イキ』『いき』。

どうだろうか、漲る和の精神…。そう考えると『粋』とは不思議な言葉である。

僕が愛してやまない作家池波正太郎の食卓の情景をカバンに携え、粋を極めるために今回のYAJIKITAは
下町浅草を訪れた。
我々YAJIKITA一行が訪れたのは、浅草のシンボル浅草寺の裏である。

『裏』…。なんとなくそそられる響きではある。
この地区は通称『裏観音』と呼ばれ、観光地区とはまた、趣の違った雰囲気をかもし出している。

というのもこの一帯は芸者さんたちが身を置く「置屋」さんが立ち並び、通りには和服の小物売り屋さんや、昔ながらの
蕎麦屋さん、など空気に江戸が溶け込んでいる地区なのだ。無論観光客の姿はほとんど無いに等しい。

不思議の国に迷い込んだアリスよろしく、我々は仲通を奥へ奥へと進んでいった。


言問い通りをちょっと入ると、提灯が並ぶ、とある建物を発見。

看板には「浅草見番」と書いてある。ここは浅草の芸者さんや、幇間さんなどがその名を登録している事務所のような場所。
中に入ると置屋さんの札や料亭の札が壁にびっしりと並んでいるではないか。

いっ・一体どんだけの芸者さんがここにいるんだろう??

井門宗之28歳、かなりドギマギしながらもこの見番2階にある芸者さん達の稽古場へと向かった。

ちょっとした料亭風の造りをした見番2階へと上がると、離れたところから何やら小唄の調べ。
中を覗くと若い芸者さんが3人、まさに日本舞踊の稽古をつけられている真っ最中。
着物を着たうら若き芸者さん達。中には1月にお座敷デビューする芸者さんもいるとの事。

芸者名は「よしまる」さん「さやか」さん「ゆたか」さんの3人。
日本の伝統に触れたくて、その文化が大好きで芸者の道を歩んでいるという。
稽古中の彼女達は勿論お化粧をしていない。
しかし、そのツルンツルンのお肌に我らがweb担当スタッフが大感激(苦笑)
控えめに、しかし芯のあるまっすぐな表情で夢を語る彼女達の姿を見て、

「かわい過ぎる…。」

と若干危険な笑顔を振りまいていた。(彼の笑顔も生まれたての赤ちゃんクラス)
彼女達に踊りの稽古をつけていたのは日本舞踊藤間流の藤間章作先生。
踊りのお師匠さんらしい、とても柔らかい物腰の中に、しかし彼女達への指導の目は厳しさをたたえている。 稽古中の舞台には一種張り詰めた空気さえ漂っているかのようだ。

その緊張感もあるのだろう。日本舞踊のゆったりとした踊りの練習であるにも関わらず、踊り終わった彼女達は額に汗を浮かべ、どっしり疲れた表情を見せている。

一流の芸者さんになるための稽古も、また一流でなくてはならない。わかってはいるのだが、この厳しさを健気にも乗り越えようとする若い3人の芸者さん達の姿を見ていると、こちらの胸もキュンとしてくる。

俗に言う『萌え』とはこの事か…(絶対に違いますね、失礼致しました)。


藤間先生や、この3人の芸者さんの話を伺いながら思ったのだが、彼女達はもう稽古を同じくするだけの「同期」とは
違う結びつきを持っているような気がする。

それは藤間先生であったり、見番の千葉さんという男性であったりもそうだ。
ここに流れる雰囲気は、「家族」そのものなのだ。家族の風景がここにある。

師を敬い、子を慈しみ、厳しさの中に優しさを秘めている。それは言葉には出さない、失われた日本の家族の原風景のような。

ここにも表立って出てこない、一つの『粋』を見たようなきがした。
ところ変わって浅草寺表。

大江戸八百八町の匂いをまだ少しだけ残す、下町浅草。
ここには未だ多くの職人が匠の技をもって仕事をしている。なかでも今回訪れた場所は、
染絵てぬぐいの『ふじ屋』さんだ。浅草寺のほど近く、裏通りにこの手ぬぐい屋さんはある。
ご主人は御年88歳の川上桂司さん。

いまの言葉で言うと、デザイナーの川上さんは、88歳という年齢には到底見えないお元気っぷり。東京に来て思った事の
一つに『下町のお年寄りはみな元気』というのがあるのだが、まさに川上さんもその通り。
こちらが驚くほどの健脚とチャキチャキぶりで、若造井門に江戸の粋を教えてくださった。

取材の翌日は大阪に展覧会出展の為、出張という。

何日もかけて作り上げる染め絵手ぬぐいの奥の深さと、
江戸の昔から脈々と受け継がれる伝統の技を継承し続ける川上さん。
今は2代目、3代目と後継者が生まれ、この伝統工芸もまだまだ元気に残るようだ。

それを聞いて一安心。こういった伝統芸能は誰かが残さなくてはいけないのである。


江戸を粋に遊ぶというのなら、江戸の伝統芸能に挑戦しなきゃ!という事で、
次に我々が向かったのは日本に4人しかいないという、幇間の一人・桜川七好師匠のもとだ。
幇間芸といえばお座敷芸の大定番。この幇間さんはまたの名を「たいこもち」とも呼ばれる。

こちらの名前の方が分かり易いのかもしれない。
非常に柔和な顔付きの七好師匠、井門が
たじろぐ話術である(当たり前か)。

折角七好師匠にお会い出来たのだから、ここはチャレンジャー井門、何か幇間芸を教えてもらわねば!
という事で、簡単な独々逸を教えてもらうことに。

結果は…、皆さんのご想像にお任せします(苦笑)。

やはり、幇間への道は険しいのだ。一度教えていただいて簡単に出来るものぢゃあ無いって事よ、べらぼうめ。
今回、東京に残る江戸の粋を少しだけ垣間見たYAJIKITA一行だが、そこに流れる雰囲気や、時間を共有すると、
不思議な事にホッとするのは何故だったんだろう。

「粋」という事を表現しようとする事自体、無粋な事なのかもしれないが、それでも何かしらの粋を学べた気がする。
(気がするだけなんですけど…。)

果たしてこれで、ワンステージ上の男になれたのかは謎の極みだが、本物の粋が根付く街・浅草は是非皆さんにも
体感していただきたい!

そこには「粋」という枠で括られた『優しさ』、『厳しさ』、そして『洒落』が今も息づいているのだから。