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旅人:今泉 清保(HPはコチラ) 撮影:中村隆之

   校長 野田知佑
   「川の学校」吉野川・川ガキ養成講座
     〜第1回キャンプ 吉野川下流:第十堰北岸〜

     
 
子供の頃、川で遊んだことはあるだろうか。私自身については、川べりで石を投げたり、ちょっと川に
入ったらズック(この呼び名なつかしいな)を片方流されてしまったりという経験はあるのだけれど、 川に飛び込んで遊んだり、
魚を獲ったりしたことは無い。それ以前に、川は子供だけで行ってはいけない、危ないところであった。
四国の徳島県に流れる吉野川。
広大な川幅を誇る、日本有数の川だ。

この川の河口から14キロほど上流に「第十堰」という堰がある。

200年以上前に作られたこの堰は、旧吉野川に水を流すために有効に働いてきたのだが、この堰を壊して下流に可動堰を作るという計画が持ち上がった。

住民投票でこの計画は白紙撤回されたのだが、計画そのものが無くなったわけではない。

このことを機に、豊かな吉野川を守るためには、川で遊ぶ
「川ガキ」を育てようということで始まったのが
「川の学校 吉野川川ガキ養成講座」だ。

校長はカヌーイストで作家の野田知佑さん。
野田さんの本には、この「川ガキ養成講座」のことが
出てくる。

とにかく大人も子供も楽しそう。
そこで今回、5回にわたって行われるこの講座を追いかけて取材することになった。


「川の学校」はこの“のぼり”が目印
6月17日 雲り のち 雨


第1回目は、吉野川第十堰の北岸でキャンプ。
考えてみれば、川遊びどころかキャンプだって
小学生以来だ。
テントを張って寝袋で寝るのだ。大丈夫だろうか自分。

そんな不安を抱えつつキャンプ地に着くと、もうたくさんの
子供が集まっていた。

小学5年生から中学2年生までの男女30人が、ともに5回のキャンプをすることで、川ガキへと成長していくのだ。

子供たちはまずキャンプネームを決める。
川の学校では、子供もボランティアスタッフも、みんなキャンプネームで呼び合う。

みんなそれぞれに悩みながら決めていたが、
中に「きのこ」という変わった名前の男の子がいた。

何故きのこなのか聞いてみたら「2日連続でおかずにきのこが出たから」だというので大笑い。


僕のキャンプネームは「いまちゃん」にした

さぁ開校式、と思ったら雨が降ってきた。大きなテントの下に集まって野田校長のお話を聞く。

野田さんいわく
「ここでは何をやっても自由。禁止事項はなし」

だそうだ。これには驚いた。そんな学校聞いたことがない。でも子供たちはずいぶんホッとしたようだった。
何をやってもいいだなんて、ひょっとしたら生まれて初めてなんじゃないだろうか。
そして全員に、和式のナイフ「肥後の守」が配られた。子供たちから歓声があがった!
これで竹細工、釣り竿、魚をさばいたり、何でも作るのだ。

開校式の最後は遊びのミーティング。遊ぶメニューはいくつもあって、何をして遊ぶかは子供たちが自分で決める。
釣りをしてもいいし、一人で絵を描いていてもいいのだ。
初日一番人気だったのはカヌー。講師は、冒険家であり現在はアウトドア用品メーカーモンベルの社長、辰野勇さん。



雨で流れが速かったので、川岸に近い浅いところで、みんなで一所懸命パドルを漕いだ。
でも途中から水の掛け合いが始まり、結局みんなカヌーを降りて、辰野さんのカヌーの上にどんどん座ったり、しまいにはひっくり返したりと大騒ぎになってしまった。

でも、何をやってもいいのだからこれでいいのだ。なにより本当に楽しそう。


カヌーを沈められた辰野さんは笛の名人でもあるので、今度は笛を吹き始めたのだが、
子供相手に戦っていたので息が切れて吹けなかったのでみんなで大笑い。


その近くでは「ガサガサ」という遊びが行われていた。
川岸の草むらにそっと網を近づけ、草むらを足でガサガサとつついたり踏んだりして、飛び出てきた魚を獲るのだ。

見ていると、こんなので魚が獲れるのかなぁという感じなのだが、男の子が15センチぐらいある魚を一人で
獲っていたのには驚いた。
ガサガサや釣りで獲った魚はもちろん食べる!焼くのもよし、揚げるのもよし。なにしろウマい!
晩ごはんは、班に分かれてそれぞれ別のメニューを自分たちで作る「屋台村」。私はギョウザ作りを手伝った。

材料を全部細かく切るのだけれど、見ているととても危なっかしい。
さりげなくキャベツの千切りを披露して(それほどのものじゃないが)途中でやめたら、みんな

「いまちゃんうまーい」

と言いながらマネをしはじめた。
一方で、ギョウザの皮を持ったまま

「まだー?」

と待っている子もいる。包みたくて仕方がないのだ。
ちなみにこのギョウザは大好評で、あっという間に無くなってしまった。嬉しかったが3個しか食べられなかったのは残念。

フルーツポンチ班

スイカボールもきれいに仕上がった!





焼きそば班


お鍋で焼きそばってどうよ?って思ったけど、
結果オーライ!

おいしかった〜!
たこ焼き班

最初は苦戦してたけど、最後の方はこの出来ばえ!でもこの中に、タコなしスイカや、タコなしチーズが入っていたり…

            タコス班↑


←クレープ班
夜は、川の学校恒例「夜話」。さまざまな講師の皆さんが、ランタンの灯りの下で、子供たちにいろんな話をしてくれる。

この日は釣り名人の熊谷さん、潜り名人の川上さんが、それぞれの心に残る体験を話してくれた。
そして野田さんのハーモニカ。懐かしい唱歌のメロディー、あたたかい音色が、夜の闇に吸い込まれていく。贅沢な時間。
6月17日 曇り のち 晴れ
翌朝は6時に起きて、近くの牧場へ。
みんなでこわごわ牛を触ったり、エサをやったりしたあと、新鮮な牛乳を飲んだ。甘くておいしい。

ペットボトルを持ってきて、牛乳をもらって振っている男の子がいた。こうするとバターができるのだとか。
本当に一所懸命振っていたのだけれど、牛乳の量が少なくてほんのちょっとしかできずちょっと残念。
2日目は釣りをやってみた。リールを使わず、長い竿の先に直接糸と針をつけて、川の流れにまかせて釣る。
じっと耐える釣りというか。私は2度も針を自分の服にひっかけてしまい

「いまちゃん自分釣ってるー」

と笑われた。そして魚は1匹も釣れなかった。とほほ。

見ていると、魚を釣り上げる子供はとても辛抱強い。私などはちょっと釣れないとすぐに場所を変えてしまうのだけれど、
一度ここと決めたらじーっと動かない、とても粘り強い女の子がいた。そしてちゃんと魚を釣り上げていた。えらい。
「ごはん出来たよ〜」の声を合図にみんなが走った!おもいっきり遊んだ後のごはんは格別だ。
← 3度のごはんを作ってくれるのは、キッチンスタッフさん

こうして1泊2日の密度の濃い第1回キャンプは終わった。テントも寝袋も平気どころか、心地よく疲れたのでぐっすり寝た。
そう、取材に行ったはずが、子供と一緒に思い切り遊んでしまった。

でも、それも自由だよなーと思えてしまう、それが「川の学校」なのだ。

こんなキャンプがあと4回ある。ひょっとしたら私、子供よりも楽しみにしているんじゃないだろうか。

                                                         今泉清保



                                              撮影/中村隆之  取材協力/(株)モンベル
「川の学校」校長 野田知佑

カヌーイスト、作家。熊本県出身。教員、雑誌記者を経て執筆活動に。
日本におけるツーリングカヌーの先駆者で、国内をはじめ世界中の川を旅する。
また「川遊びカヌー」を提唱し、川の楽しみ方を読者へ伝える一方、
河川改修やダム開発など公共事業による川の環境破壊をカヌーイストの立場から告発し続けている。

日本初のカヌーに乗れる犬「カヌー犬・ガク」を育てた事でも有名。
(ここに写っているのは現在のカヌー犬、一緒に暮らしているボーダーコリーのアレックス)

82年『日本の川を旅する』で第9回日本ノンフィクション賞新人賞受賞。
88年一連の活動に対して毎日スポーツ人賞文化賞を受賞。

主な著書
「今日も友だちがやってきた」
「なつかしい川、ふるさとの流れ」
「少年記」
「旅へー新放浪記」
「日本の川を旅するーカヌー単独行」
「ユーコン漂流」
「北極海へ」
「カヌー犬・ガクの生涯ーともにさすらいてあり 」