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旅人/撮影 : 中村隆之

野田知佑さんと日本一の清流・
             
四万十川を下る“川旅”@

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野田知佑さんと日本一の清流四万十川を下る川旅(前編)

折り畳み式のカヤックにキャンプ道具や食料など、いわゆる「衣、食、住、そして遊」の道具を全て詰め込んで、
世界中の川や海、湖など自然が作り出した水面を使って自由に旅する方法がある。人為的に作り出されたトレイルなどは
必要無く、自立しつつローインパクトに、自分のチカラだけで自然の懐の奥深くまで入って行ける旅の方法。

そんな旅の方法をぼくらに教えてくれたのが作家の野田知佑さん。僕も野田さんの作品を読んで、カヤック旅の
「自由さ」を知り、そして「水面からの視点」という魅力に取り憑かれた者のひとり。ある時その野田知佑さんと
直接知り合ってからは、師匠と仰ぎ、一緒に川旅を続けて来ました。ユーコン、ロシア、ニュージーランド・・・。

数年前、たぶんユーコン川の河畔だったと思うけど、師匠と弟子は焚火を前に禅問答のような会話を交わしていました。
テーマはヘミングウエイ。彼の作品に「二つの心臓の大きな川」という短編があるのだが、
野田師匠の「心の中に流れる川」について聞いてみたのだった。

僕は当然ユーコン川やマッケンジー川、アラスカの川など、考えるだけでもワクワクして心躍るような荒野を流れる
ワイルドな川の名前が挙がると期待していたのだけれど、師匠の口から出た言葉は違っていた。
「オレの心に流れる川はいつでも日本の川さ・・・四季があり、繊細な表情を持っている日本の川が一番好きなんだよ」

そんないきさつもあり、それから何度か「秋の四万十川を一緒に漕ごう」と野田師匠からお誘いを受けていた。
その「心の川への旅」が、この秋やっと実現した。

◎川旅

まだ紅葉には少し早かったのがちょっと残念だったけど、集合場所とした四万十川・網代の広い河原で野田さんと
カヌー犬のアレックスと落ち合い、カヤックを手早く組み立てて、装備を載せて出発した。

もう30年以上もここに通っている野田師匠から四万十川の自然や歴史などの解説を聞きながら、
流域に残る日本の原風景ともいえる景色、繊細な自然をしみじみ味わいつつ漕いで行く。



◎カヌー犬アレックス

アレックスはカヌー犬としてはまだ未熟で、落ち着きが無いが、見ていて笑えるのが良い。短いカヤックのデッキ上を
動き回りながら、川の中の魚に向かって吠え、川岸の鳥に向かって吠え、あげくに水に落ちて驚きつつ情けない表情をして、
野田さんにカヤックに引っ張り上げてもらっているのがおかしい。


◎ケイゴくん

今回同行した番組の映像ディレクターのケイゴくんはカヤック初体験。初体験が野田さんとの秋の四万十川なんて良いね。
野田さんも僕も「まずは漕ぐべし」っていう実践派?なので何も教えずに乗せちゃったけど、すぐに慣れたみたいで
ついて来てた。

途中、野田さんに漕ぎ方をいろいろ質問して、最後には上手になっていたな。リスナーのみなさんも、もし興味があったら
川でも海でも「まずは漕いでみる」と良いですよ。

◎ツガニ

川を下っている途中、誰かが仕掛けたカニカゴを見つけ、箱メガネで覗いてみた。大型の「ツガニ」と呼ばれる川ガニが
5〜6匹入っているのが見えた。このカニは濃厚な味でとても美味しい。

以前このカニが野田さんから送られて来た時のことを思い出した。送り状には野田さん流のジョークで
「野田水産・日和佐営業所」なんて書かれている。そのままひと晩ツガニの入った箱をキッチンに置いておいたら
箱から全員「逃亡」して、冷蔵庫の裏に逃げ込んで捕まえるのに大変だったっけ。



◎野田スタイル

午後、気に入った河原が見つかると早めにテントを張って、折り畳みのテーブルとイスを組み立てて河原をさっそく書斎化。
河原書斎と僕は読んでいるんだけど、どんな辺境地を流れる川でも瞬時にして自分の書斎にして、
本を読んだり仕事をしてしまうのが野田さんのスタイル。

野田さんがさらさらと原稿を書く横で、僕は文庫本を読んだ。今回本棚から持って来たのはアラン・ムーアヘッドの探険モノ。
アウトドアで読む探険モノや冒険モノは、リアリティーがあって楽しめる。

夕方、川面に小魚達の作るリングが出来始めるとそれが夕まずめ。毛針のついたカガシラ仕掛けを準備して竿を振る。
すぐにぷるぷるとした手応えがあり、7〜8センチのカワムツがあがって来た。しみじみ眺めてから放して、また釣る。
例えばここがユーコン川だったら、30〜40センチのグレイリングを夕食用に1人2匹は釣らないと・・・
なんてサバイバルっぽくなってくるけど、余裕があるのが良い。

◎四万十の幸

いつものキャンプなら焚火で釣った魚を焼いたり、何か料理を作るところだけれど、今夜は野田師匠の案内で、
師匠が長年お世話になっている舟母(せんば)という民宿へ。

舟母とは四万十川で昭和30年代まで使われていた舟の名前で、川と海を往復した帆掛け川舟のこと。炭など山間部の
特産品を満載した舟母は、午前中に川上から海へと向かって吹く風と川の流れに乗って四万十川を下り、河口の町へ。
町でそれを売ったら今度は海産物を載せて、午後になると海から川上へ吹く風に乗って帆走して上流へ遡っていったそう。





民宿に伺うと、挨拶もそこそこにまずは川の水量の話で盛り上がる舟母の御主人と野田さん。
やっぱり流域の人はこの川が大好きで、川に向かって生活していることを感じた瞬間でした。

テーブルの上には茹でたての真っ赤なツガニ、火振り漁でとった鮎の塩焼き、天然ウナギの蒲焼き、鮎のウルカ味噌、
カジキマグロの刺身などたくさんの四万十川の川の幸、山の幸、そして海の幸がたくさん並んでいました。
そして出来たばかりの「どぶろく」も用意されていました(流域はどぶろく特区でどぶろく作りが盛んだそうです)。
女将さんからツガニの食べ方や鮎のウルカ味噌の作り方を教わりながら、四万十の幸を堪能しました。


◎キャンプの夜

焚火を熾して酒を飲みながら、最近読んだ本や映画の話をしたり、楽器を演奏するのが野田さん流の夜の過ごし方。
決して急がず、目の前を流れる大河のようにゆったりと流れる時間を楽しむ旅のスタイル。
野田さんが長く続けている連載のテーマ「のんびり行こうぜ!」とはこういうことなんだとあらためて感じる瞬間です。

                                                                 後編へ続く

取材協力/(株)モンベル
野田知佑(のだともすけ)

カヌーイスト、作家。熊本県出身。教員、雑誌記者を経て執筆活動に。
日本におけるツーリングカヌーの先駆者で、
国内をはじめ世界中の川を旅する。
また「川遊びカヌー」を提唱し、川の楽しみ方を読者へ伝える一方、
河川改修やダム開発など公共事業による川の環境破壊を
カヌーイストの立場から告発し続けている。

日本初のカヌーに乗れる犬「カヌー犬・ガク」を育てた事でも有名。
(ここに写っているのは現在のカヌー犬、一緒に暮らしている
ボーダーコリーのアレックス)

2001年からは吉野川・川の学校の校長として、
川ガキの育成にあたっている。

82年『日本の川を旅する』で第9回日本ノンフィクション賞新人賞受賞。
88年一連の活動に対して毎日スポーツ人賞文化賞を受賞。

主な著書
「今日も友だちがやってきた」
「日本の川を旅するーカヌー単独行」
「ユーコン漂流」
「北極海へ」
「世界の川を旅する」
「なつかしい川、ふるさとの流れ」
「少年記」
「旅へー新放浪記」
「カヌー犬・ガクの生涯ーともにさすらいてあり 」等多数

今回の旅人、アウトドアカメラマンの中村隆之(なかむらたかゆき)です。

カヌーやカヤック、ラフト、マウンテンバイク、トレッキングなど、
自然環境へのインパクトの少ない「人力」という方法を使って世界中の
辺境&極地に入り、そこに暮らす人々の文化や自然を写真におさめて
発表しています。

これまでアラスカ、ロシア、カナダ、スイス、ニュージーランド、日本など、
国内外へ30回以上の遠征を行いました。
最近一番心に残った遠征先はグランドキャニオンの川下り。
個人の入域許可が下りるまで12年待って、夢のような1ヶ月の
激流生活を過ごしました。

11月10日と12月10日発売のBE-PAL誌には、
作家の野田知佑さんとこの番組でも取り上げた「吉野川・川の学校」の卒業生2人とこの夏おこなった、
ユーコン川遠征の模様が掲載される予定です。

 

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