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旅人 : 今泉 清保

日本の平泉から世界のHIRAIZUMIへ

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平泉という地名は知っていたし、どの辺にあるのかもなんとなくわかっていたけれど、一度も行ったことが無かった。
新幹線で東京から一ノ関までいちばん早くて2時間10分。そこから在来線に乗り換えてたったのふた駅だから、
それほど遠くない。

その平泉は、来年の世界遺産登録を目指している。先日、島根県の石見銀山が登録されてニュースになったが、
そもそも世界遺産に登録されるというのはどんなことなのか、実のところよくわかっていなかった。そこでまず、
平泉町教育委員会の八重樫忠郎さんに、世界遺産に登録されるってどんなこと?という基本的なことから伺った。

世界遺産に登録されるためには、それぞれの国で候補を挙げてリストを作る。この「暫定リスト」に載ることが第一歩だ。
今は地方公共団体が提案したものを国が審査する形になっているが、以前は国が選定していた。
つまり、平泉は自ら手を挙げたわけでもないのにリスト入りしたのだそうだ。

世界遺産に登録されるためにまず何をするか。なんとなく、道路や観光施設を整備したりすることを想像してしまうが、
八重樫さんいわく「住民の同意を得ること、理解してもらうこと、これに尽きる」だそうだ。

石見銀山を訪れた知人から「なんだかぱっとしなかった」という話を聞いた。
おそらく観光地を想像して行ったからだと思う。
違うのだ。
世界遺産に登録されるということは、昔から変わらずあるものを、そのままの形で未来まで残していくということ。
石見銀山が一見ぱっとしないように見えたのは、ヘタに観光地化せず昔のままの姿が残っていたからで、
だからこそ石見銀山は世界遺産になったのだ。

平泉町では、ある決まった区域に建物を建てる場合、屋根や壁の色が決められている。日本家屋であることもだ。
世界遺産に登録されると、そこに住む人の生活に制限が出てくる。だからこそ、町民の理解が必要になる。

さて、では平泉には何が残っているのか。平泉といえば中尊寺、そして金色堂が有名だが、
他にも当時の栄華をしのばせる遺跡がいくつもあるのだそうだ。
「古都ひらいずみガイドの会」の滝沢テル子さんの案内で歩いてみることにした。

平泉は、平安末期に奥州藤原氏が四代にわたって繁栄させた。まず訪れたのは、三代秀衡が建立した「無量光院跡」。
道端にひょうたんのような形の不思議な田んぼがあり、その奥に小島、そして小島には建物の跡の礎石が均等に並んでいる。ここで財布から十円玉を取り出していただきたい。
十円玉には京都の平等院鳳凰堂が彫られているが(ちなみにこちらが表)、似たような形の建物がここに建っていたそうだ。

この無量光院の真後ろに、秀衡が一晩で築いたと言われる金鶏山があり、
建物の中心線と金鶏山の頂上は一線で結ばれている。毎年春と秋の彼岸の頃になると、
この無量光院跡から見える金鶏山の頂上に日が沈むのを見ることができるそうだ。
山も建物も全て計算されて作られていた。そのことを知ってちょっと興奮した。そんな大掛かりな街づくり、
今ではとても考えられない。

北上川沿いにある「柳之御所遺跡」は、今でも発掘が続けられている。ここは、堤防とバイパス道路の建設のため、
発掘調査が終わったら無くなることになっていた。しかし発掘を始めたところ、
中国産の白磁をはじめたくさんの遺物が見つかった。歴史的にとても重要な場所だということで、
国は計画を変更して遺跡を保存することを決めた。もしここが堤防とバイパスになっていたら、
世界遺産なんてありえなかっただろう。

お堂と洞窟が一体化していたり、絶壁に仏像が彫られている「達谷窟(たっこくのいわや)」は見て面白いところだったが、
私が驚いたのは「長者ヶ原廃寺跡」であった。田んぼの真ん中に、大きな丸い石が規則的に埋まっている。最近の調査で、
大きなお寺の跡と考えられるようになったけれど、ガイドの滝沢さんが小さい頃は商人の屋敷の跡だと言われていたそうだ。
商人の屋敷の跡なら、石を掘り起こして田んぼにすればいいものを、平泉の人々は手をつけずずっと守ってきた。
「無量光院跡」もそうだ。周りはすっかり家が建ち並んでいるのに、そこだけ埋めもせず900年以上守ってきたのだ。
そう考えると、ただの田んぼも石の連なりも、大きな価値があるのがわかってくる。

観光客を増やそうという意図で、世界遺産の登録を目指すところも多いと聞く。
しかし、いったん登録されたら勝手に変えられない。ひたすらに守っていかなければならない。それはとても大変なことだ。
観光目当てではとてもやっていけない。
でも、平泉はきっと大丈夫だろう。世界遺産に登録されようがされまいが、ずっとずっと前から、この土地を守り、
残し続けてきたのだから。

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