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旅人:アナウンサー 今泉 清保(HPはコチラから

東海道最初の宿、品川 編
〜弥次さん喜多さんの珍道中に思いを馳せつつ東海道をたどる旅〜

     
 
弥次さん喜多さんの珍道中に思いを馳せつつ東海道をたどる旅、今回は東海道最初の宿、品川の旅。

正直に言うと、品川は旅気分が盛り上がらないなーとちょっと思っていた。新幹線の駅ができてから、駅の周りには高層ビルが立ち並び、すっかり都会の景色になってしまった。

ところがどっこい、その高層ビルのふもとには昔ながらの味や人情がちゃんと守られていたのだ。
京浜急行に乗って品川駅を出るとすぐ、八ッ山橋の踏切を通る。その踏切から先が、旧東海道の品川宿。品川育ちの大学生、谷井さんに商店街を案内してもらうことに。
まず案内されたのが、マンションの1階にあるコンビニエンスストアの前。ここに小さな立看板があって「土蔵相模跡」と書いてある。

もともとここには相模屋という旅籠があって、外壁が土蔵造りだったために土蔵相模と呼ばれていたそうだ。幕末の頃、高杉晋作、伊藤博文など、幕末の志士たちがここで密議をしたのだとか。

ちょっとした場所に全部歴史があるのが東海道だ。

次に訪れたのは、木造の古い店構えの「丸屋履物店」。慶応元年創業というから、なんと140年以上もここでお店をやっているのだ。ここでは台と鼻緒を選んで、その場で鼻緒をすげてもらえる。
「すげる、なんて言葉は使わなくなっちまったけどねぇ」

とご主人の榎本さん。
ふと見ると、下駄やサンダルはあるのだけれど、靴が無い。先代が

「うちは靴屋じゃない、履物屋だ」

と言って絶対に靴を売らなかったので、今でもお店には靴が無いのだとか。

江戸っ子だなぁ、と思ったら、品川の人たちは自分のことを「江戸っ子」とは言わないのだそうだ。
「泉岳寺から向こうが江戸、こっちは品川」

だそうで、品川の人は「品川っ子」なのだ。
江戸と品川の境なんて、普段は全然意識しないけれど、今でもちゃんとあるんだなぁ。
さて、お腹が空いたので谷井さん行きつけの天麩羅「三浦屋」さんへ。店に入ると「あらマリちゃん」と、谷井さんと親しげなおかみさん。実は、こちらの娘さんと谷井さんは同級生で、家族ぐるみのお付き合いだそうだ。
ご主人の堀江勝男さんは、もともとは船宿をやっていた漁師さん。だからネタは江戸前にこだわっている。

オススメの「さかな丼」をいただく。アナゴにキス、メゴチにししとうが乗って1100円。衣のサクサク感を活かすために、衣はつゆにくぐらせず上からかけてある。そのサクサクの衣の中に、ふんわりとしたネタがあってたまらない。

おかみさんの雅子さんは、商店街の有名人だとか。谷井さんとのやりとりを聞いているだけで面白い。なんとも居心地のよいお店だ。
品川宿の街道から先は、昔はすぐ海だった。今、海はずいぶんと埋め立てられてしまったが、海からの水路があって、品川浦には今でも屋形船や漁船が泊まっている。ここには海の匂いが残っている。

品川っ子にとって一番大事なのは、なんといっても品川神社のお祭りだ。

残念ながら今年のお祭りはこないだ終わってしまったが、お神輿が練り歩いて大変な賑わいだそうだ。神社には53段の階段があるのだが、この急な階段をお神輿が上るというのだから驚き。
品川に残る名物に「かくや漬け」という漬物があるというので、「するがや」さんにおじゃました。

ぬか漬けの古漬けを洗って、酸味を落としたものがかくや漬け。

それぞれの家で作っていたから「かくや」漬け、という説もあるそうだが、今では商店街でもここだけでしか売られていない、とお店の篠原さん。
ずーっと続いているぬか床だけは絶対に絶やさないようにしているそうだ。

古漬けというからもっと酸っぱいかと思っていたら、混ぜてあるシソとショウガが効いていてとてもさっぱりした漬物だった。おいしい。
続いて、品川っ子が作ったお店「あぶりや連」に連れていってもらう。ここは1階がスタンディングバー、地下が居酒屋になっている。

店主の金子さんは生粋の品川っ子なのだが、大学に入り就職をして、品川は朝出て夜帰るだけの場所になっていた。

ふと気づくと、商店街がだんだん寂しくなっている。幼なじみが集まって飲んだときに、なんとかできないかという話になり、とうとうNPO法人を作ってお店を始めてしまった。
品川の地ビールとお刺身をいただいた。お刺身がおいしいなぁと思ったら、品川っ子仲間に、築地の魚河岸で働いている人がいて、新鮮な魚が入るのだとか。

他にも、焼酎の種類には自信ありだそうだ。近所にふらっと立ち寄れるこんなお店があったらいいなぁ。
商店街を抜けて、国道15号を歩いていくと、鈴が森刑場跡の碑が道路脇にひっそりと立っている。
恋しい男に会うために火をつけた罪で死罪になった八百屋お七が、火あぶりの刑に処せられたのがここ。
静かに手を合わせて後にした。


というわけで、私は品川をあなどっていた。人情に触れたくなったら、ふらっと訪れてみようかな。なんたって近いもんね。