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旅人 : AKI

益子焼ニューカルチャー編

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残念ながら○○焼き・・・・と聞いても、“名前は知ってるけど、その特徴までは解らない”という、焼き物知識は素人な私。
今回は、数多くある有名な焼き物の中から、約150年の歴史を持つという益子焼にスポットを当て、 まずは益子焼きが
どういうものなのかを知るべく、栃木県東南部に位置する益子町の「窯業技術研究センター」に向かいました。


窯業技術研究センター内

研究所と聞くと、普段の生活に馴染みの無い分、一体どんな実験が・・?!ドキドキ・・と緊張していたのだけど、
廊下や教室があって、何だか学校の様な雰囲気。

実はこの「窯業技術研究センター」では、粘土や釉薬の試験や研究は勿論、益子焼に興味を持った人を招いて
後継者育成も行ってるそうで、研究所でもありながら本当に学校でした。

さて、「窯業技術研究センター」特別研究員の塚本準一さんに、本題の益子焼の定義を教わりました。
細かく決められた数種類の釉薬を使用し、土は、耐火性に優れ釉薬の付きも良く可塑性に富んでいる土を使用。
そこに他の成分を混ぜないために、やや厚みのある作品ができあがるという特徴を持っているとのこと。

最近では益子焼が色々変化してきていて、元来ある定義を含みつつ、そこに独創性を加えた新しい益子焼が
増えてきているそうで、センター内には益子焼の第一人者とも言われている、大塚啓三郎や浜田庄司の、
いわゆる益子焼という作品に加え、卒業生の斬新な作品達が展示されていました。



浜田庄司さんの作品




バーナード・リーチさんの作品



加守田章二さんの作品



↑ 生徒達の斬新な作品 ↓



塚本さんと一緒に

益子町は人口2万5千人の小さな町ですが、現在では約380件の窯元があるという、町自体が陶芸をするのに恵まれた環境。
定義を踏まえた上で、益子焼といっても幅が広いことがわかり、さっそく色々な益子焼を見にいくことに。
数ある窯元の中で、最大でもあり、なんと、あの群馬県にある横川駅の名物駅弁「峠の釜飯」の器を作っている(!)
「つかもと」さんにお邪魔しました。

たくさんの益子焼が並ぶ店内の一角にギャラリースペースを発見。
ちょうど個展が開催されていて、名前を見ると・・・、加守田 太郎。・・・加守田・・?
あれ?この名前は先ほどの窯業技術センターでも見たような・・?
陶芸の個展には行ったことが無かったし、気にもなったので早速足を踏み入れました。







加守田太郎さんの作品

ギャラリー内には、角が印象的な造形で、藍色を基調とした中に様々な幾何学模様が描かれた作品が展示されていました。
造形が本当にすばらしい・・。
コーヒーカップから壷などいろいろな形の作品があるのに統一感のあるスペースになっています。



加守田太郎さんにお話を伺ってみました

ご本人がいらっしゃったので、色々聞いてみるとまず「窯業技術センター」で見たのは、新しい益子焼の文化を築いた
有名な陶芸家で、お父様の加守田章二さんの作品だったんです!

初めは陶芸家への道を考えていなかったという加守田さん。
お父様の死をきっかけに陶芸を本格的に始めたそう。

今回の作品には手びねりで角と曲線の造形美を意識し、幾何学模様を描くのをテーマにしたとのこと。
訪れるお客さんの中に、お父様の作品からのファンの方もいらっしゃってました。



加守田太郎さん、島田恭子さん、そしてAKIで陶芸談義を…

加守田さんの友人で、同じく益子町で陶芸をされている、島田恭子さんを紹介していただき、
これからの益子焼についてお話を伺いました。

島田さんも、益子焼の定義を意識しながら独創的な作品を作り続けていている、これからの益子焼を支える第1人者。
そんなお2人に今の益子焼の魅力について聞くと、気候・風土もさることながら、
他方から陶芸家を目指してやって来た人に対しても、寛容に受け入れてくれる益子町の環境自体も良いとのこと。

元々益子出身ではない島田さんのような方にとっても、陶芸をしやすい環境であったそうです。
益子焼の定義も大事にしつつ、恵まれた環境の中で、自分の個性をプラスして思い思いの作品を作ってるんですね。
お2人ともどういう時に作風を思いつく?とか、何度で焼いてる?とか、陶芸家ならではの会話が弾んでました(笑)。

それにしても、絵をつけるタイミングや温度って、人それぞれで違ってくるという事に驚きました。
陶芸って奥が深いんだなぁ。

そこで気になってくるのは、島田さんの作品。
島田さんにお願いをして、ギャラリーと工房を見学させて頂くことに!

島田さんは元々東京で働いていたのだが、ある日デパートの画廊で行われていた個展で、
国際的にも活躍した益子焼の陶芸家・瀬戸浩さんの作品に出会い、経験は無かったが、
突如陶芸家になることを決意したという、穏やかな口調と華奢な体からは想像のつかない行動力の持ち主。

益子に行き、陶芸を1から勉強し、現在では、ご主人やお子さんたちも、それぞれの釜を持つ陶芸一家。
作品の特徴として布目を使っているとの事。

ぽってりとした印象のある益子焼に、布目を使うとどうなるのだろう・・・。
ギャラリーに着き、作品を見た途端、思わず感嘆の声を漏らしてしまいました。
視界に入る作品の全てに桜の花が咲いていたんです。




島田恭子さんの作品

釉薬独特のつるっとしたものではなく、質感はマット。布目を使うことによって、まるでキャンパス画に描かれた1枚の絵の様。
桜って時間帯や心情によって見え方が変わったりしませんか?
それが作品ごとに見事に表されているんです。



桜の花びらを良く見ると、薄く金色に縁取られています。
桜を描いてから1度焼いて、その後、縁取ってまた焼く為、
淡い画に馴染んだ上品な仕上がりになっています。


背景の部分は、なんと口で吹いてその淡さを
出しているんですって。腹筋が鍛えられるのよ(笑)と、
楽しそうに話す島田さん

約40点の桜の内同じものは1つも無い・・・。
ここに居るだけで様々な表情の桜を見ることができました。

島田さんは絵を描くのは前から好きで、桜以外にも、花や植物をモチーフにした作品を作っていますが
「特に桜が多いのは、生まれた所が桜の名所として知られている
茨城県・岩瀬町だったこともあるのかなぁ?」と穏やかに語ってくれました。



島田さんの工房

私も陶芸をしてみたくなり、島田さんの工房でご指導して頂きながらチャレンジ!
実は学生時代に授業で陶芸をやったことはあるのだが、それももう○○年前・・・。
少しでもその経験が役立てばいいなと願っていた私。

しかしその願いは始めの作業・土練りで絶たれました。
・・・練れないんです・・・・・。
5kgある粘土を昔の記憶をたどりながら練り始めたのだけど、びくともしないんです。
ある意味芸術的な土の塊ができました・・。



まずは土練りに挑戦

土が乾いてしまうので島田さんに結局お願いをすることに。
ちゃんと練れるようになるまでは、毎日やっても最低3ヶ月はかかるそう。そりゃぁ、少しやったことあるくらいじゃ無理ですよね。

そして第2段階ロクロ。
まずは島田さんにお手本を見せて頂きました。
土が綺麗なお椀のような形になっていったり、島田さんの手の中で、土が喜んで踊っているように見えます。
あっという間に出来上がったお椀を「底」と決めたところに1本の糸をするっと通して本体から切り離す。
その作業はまさに一瞬!
あまりの速さに目がついていけないほどだったんです。
こんな技、私に出来るんだろうか・・。

不安な気持ちのままロクロの前へ。手をしっかり固定して土と手を馴染ませます。
気を抜くと土に負けるので、思わず減ってしまう口数。底辺が厚めのお椀を何とか作成し、いざ!切り離し!!!
するっと糸を通しましたぁぁ!



糸で切り離し。この数秒後に悲劇が!!

・・・・ボトッッ・・・・。



無残なお姿に…

工房内に沈黙が走りました。
お椀だったそれはロクロから飛び出し、見るも無残な粘土に変貌しちゃったんです。
泣きそうになる私を、あまりに不憫に思ったのか、スタッフの皆も再チャレンジを許可。

今度こそっ!

・・・2度目のチャレンジで、ものすごーく分厚い底のお椀を何とか完成させました。
分かってはいたけど、簡単に出来るものじゃなかったです。
ほぼ初心者だったので、気がつけば洋服はドロドロ。島田さんの工房も相当汚してしまいました。
ごめんなさい!

でも自分の小さな動作1つで、その形体を変えていく粘土は何だか愛しくて、プライベートでも陶芸やりたくなりました。

島田さんの工房を後にし、それぞれの料理に合った益子焼でご飯を出しているレストランがあると聞きつけ、
早速伺いました。「レストラン古陶里」。

創業以来変わらないメニューを提供しているというレストラン。
中はアンティークな雰囲気で、初めて訪ねたのに何だか懐かしい感じ。
店作りから、料理の素材にもこだわりを持っている古陶里で頂くものはコーヒーまでおいしい!



コーヒーカップは島田さんの作品でした!


カニピラフ


ポークステーキ


その中でも人気のメニューという、カニピラフとポークステーキを頂きました。
ご飯が見えないほど盛られた、築地から直送された蟹とご飯のほろほろ具合。
コトコトと煮込まれたオニオンソース、どちらも絶品!!!

オーナーの高橋保さんがこだわって選んだ益子焼に盛られた料理は、何だかご飯のぬくもりが増したような
目でも楽しめるもの。
1つ1つ違う器にそのこだわりを訪ねたら値段や名前で買うのではなく、「いい」と思った器を買うようにしているそうです。

自分の審美眼を信じる。
これってモノを買う時忘れがちになっちゃうけど大事なことですよね。再確認!

今回、色々話を聞いて私なりに感じたのは、伝統を大事にしながら、変化し続けるスタイルを持つ。
それが益子焼・・・なんじゃないかな?ということ。
日常生活で使われての美しさ「用の美」をもつ民芸陶器。
生活様式も変わってきているので、それに合わせた陶器が出来ていくのはとても自然なことだとも思います。

勿論、昔ながらの伝統的な益子焼を作ってる窯元さんもいらっしゃいますし、それを守り続けて欲しいとも思っています。
ここ益子町では、伝統と現在とが上手に共存している様に感じました。
益子焼の魅力、そして陶芸は奥が深いので、近々また、個人的に訪れたいと思っております。

 

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