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旅人 : 今泉 清保 (HPはコチラ

企画力で頑張る第三セクター・南阿蘇鉄道 編

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 阿蘇には、山を囲むように2つの鉄道が走っている。北側が熊本と大分を結ぶJR豊肥本線、
そして豊肥本線の立野から南阿蘇に延びるのが南阿蘇鉄道だ。

南阿蘇鉄道のレールバスたち

 南阿蘇鉄道は昭和3年に国鉄宮地線として開業し、その後高森線と名前を変えたが、赤字のため廃止対象路線となり、
昭和61年に第三セクターの南阿蘇鉄道として再スタートした。

  同じような鉄道は全国にあるが、もともと赤字だったのでどこも経営が大変だ。しかしここ南阿蘇鉄道は、
ユニークな取り組みをいろいろと行っているというのだ。

「南阿蘇水の生まれる里白水高原」駅は小さな駅舎と一面のホームがあるだけ

 例えば、日本一長い名前の駅がある。「南阿蘇水の生まれる里白水高原」で14文字。ひらがなで書くと
「みなみあそ みずのうまれるさと はくすいこうげん」で22文字の日本一になる。

 この駅が日本一長い名前の駅になったのは92年のこと。しかし2001年、島根県の一畑電車に
「ルイス・C.ティファニー庭園美術館前」という駅ができて日本一の座を明け渡していた。
ところが今年3月にその美術館が閉園となり、5月に駅名が「松江イングリッシュガーデン前」に変わった。
それで、6年ぶりに日本一の座に返り咲いたわけだ。

 駅そのものはホームがひとつで、周りに水田が広がるのどかな駅だけれど、再び日本一になったことで
観光客や鉄道ファンが訪れていた。おかえりなさい、という感じだろうか。



窓が無いからトンネルに入ると壁がすぐ横に迫って、しかも風がすごいっ!

 南阿蘇鉄道の目玉はトロッコ列車だ。4月から10月の土曜と日曜に運行される。
窓の無い客車が機関車に引かれてゆっくりと走るのだ。乗ってみると、木でできた向かい合わせのベンチには
テーブルもあって、お菓子や飲み物を持ってのんびりと乗ることができる。



第一白川橋梁からの眺め


トロッコ列車から橋の下を覗いてみると…。


62m下の恐怖が!

 立野駅を出て最初のトンネルを抜けると、眼下に深い渓谷が広がる。ここが第一白川橋梁という鉄橋。水面からの高さは
62mもあって、現在営業運転をしている鉄道の川にかかる鉄橋の中では日本一だ(海にかかる瀬戸大橋の方が
もっと高いのだが)。鉄橋に差し掛かると列車のスピードがゆっくりになって、車内のあちこちから歓声があがる。
思わず顔を出して覗き込んでしまう。



トロッコ列車の車掌さんと一緒に

 沿線の名所は、車掌さんがその都度アナウンスしてくれる。私が乗ったときには若い男性の車掌さんだったのだが、
聞いてみたらアナウンスの内容は車掌さんがそれぞれ自分で考えているのだそうだ。
だから、乗るたびに内容がちょっとずつ違うらしい。ちょっと聞き比べてみたい。



「阿蘇下田城ふれあい温泉」駅はお城をイメージ


ホームからみると駅舎に煙突が!

 「阿蘇下田城ふれあい温泉」という駅のホームに着いたら、ふっとお湯の匂いが漂ってきた。
この駅には温泉施設があるのだ。

 三度のメシより風呂が好きな私。ホームに降りて駅舎に入ると、ちょっとした売店があって、その先に改札ならぬ番台が
あるのが面白い。

 早速温泉につかってみた。無色透明であたりの柔らかいお湯だ。しばらくして列車が入ってきたので窓の外を見たら、
そこはすぐ駅のホームで列車に乗っている人の顔まで見えた。窓の外が駅のホームというのは
ものすごく非日常な感じなのだが、入っている地元の人も列車に乗っている人も別に普通なのがおもしろい。
もう当たり前になっているんだな。



この窓の向こうが温泉

 終点の高森駅の手前で、列車は大きく左にカーブするのだが、カーブせずまっすぐいったところにトンネルが見える。
南阿蘇鉄道は、本来はこのトンネルを経て、宮崎県の延岡までつながる計画だった(宮崎側は国鉄時代に高千穂までが
高千穂線として開業し、その後、第三セクターの高千穂鉄道となっていたが2年前の台風で大きな被害を受けて
廃止されてしまった)。

  ところが、トンネル入り口から約2キロのところで毎分36トンという大量の水が溢れ出し、その影響で町の湧水8か所が
涸れて水道が断水してしまうという事態になり、工事を中断せざるを得なくなってしまった。

 実は阿蘇は、長い駅名にもあったように水の里だ。阿蘇に降った雨が、長い年月をかけて地上に湧き出てくる。
阿蘇の人がみな自慢するとてもおいしい水なのだが、トンネル工事については水のせいでとうとう完成を
断念せざるを得なくなり、鉄道の計画そのものも中止されてしまった。

 ずっと水源として使われていたトンネルは「高森湧水トンネル公園」となり、550メートルのところまで入れるようになった。
ここがなんとも不思議な景色で、トンネルから水が流れてきて川になっているような感じなのだ。奥に入ると、
七夕飾りや イルミネーションがある。毎年7月には七夕祭りが行われるそうだ。確かに、トンネルの中だったら昼間でも
七夕飾りが楽しめる。



水が噴き出しているのが分かるかな?


「高森湧水トンネル公園」を案内して頂いた高森町役場の馬場孝平さんと一緒に

 トンネルの突き当たりは、大量出水の様子が再現されていて、壁面から水が噴き出している。横にはひしゃくがあって、
噴き出している水が飲める。クセの無い水でおいしい。
  もしこのトンネルから水が出ていなかったら、熊本と宮崎は鉄道でつながっていて、第三セクター鉄道になることも無く、
大動脈路線として特急列車が走っていたんじゃないだろうか。今言っても仕方がないのだけれど。

 阿蘇といえば北側が観光の中心なのだが、南阿蘇もとてもいいところだ。そして、車で行くのもいいけれど、
ぜひ南阿蘇鉄道には乗ってもらいたい。時間の流れがゆっくりゆったりしていて、とてものんびりできるので。

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