周辺地図はコチラ
 
旅人 : 井門宗之

アートを巡る香川・直島〜現代アートの旅〜

     
 

目の前には瀬戸内の海、背後には開けた高松の市街地。
潮風を頬に受け、いま井門はフェリー【なおしま号】の上にいる。
しばし都内の旅を続けたTEAM YAJIKITA井門班。その様は同じYAJIKITA
TEAMからも【ぶらり途中下車班】と呼ばれ、なかなかブレイクの機会を逸していた…。しかし、ついにこの日が来たのである!

井門宗之、YAJIKITAプロデューサーに就任!!

[歓声SE.CI-]
リスナーの皆様A『おめでとう!!井門さん!!』

リスナーの皆様B『ついに来たか、井門!!』

井門P誕生に沢山の方が沿道を埋め尽くしております。
手に手に「YAJIKITA」と書かれた小旗を振り、紙吹雪が舞う中、
あ〜っと…井門宗之32歳、男泣きです。

皆様『い〜も〜んっ!!い〜も〜んっ!!』

鳴り止まぬ井門コール。
皆様C『よっ、井門!!』
皆様D『任せたぞ、井門!!』

皆様E『オウ、イモソサン、ヨカッタナ…。』

おぉ〜っと海外から駆け付けた方もいらっしゃる様です。

[歓声SE 〜FO.]

いやぁ、リスナーの皆さん、初めて旅に出てからおよそ5年、当時28歳だった井門も来月で33歳。結婚もした。各地を旅しながらこの番組に関わり続け、ついにプロデューサーの任に就いたのであります!
様々な想いが去来する中、今まさにその最初の任となる香川県・直島に向けてフェリーに乗り込んだのだ。



今回の旅は現代アートの島、直島のアートを探る旅。
【直島】と言えばいまや世界中のアーティストが注目する現代アートの島。それを象徴するように、 島の中にはその輪郭がしっかりと点在している。そんな直島では今年の夏、直島も含めた瀬戸内海の7つの島と高松を舞台にした一大芸術祭『瀬戸内国際芸術祭2010』が開かれるというのだ!!記者発表なども終え、まさに走り出したこの祭りに盛り上がる瀬戸内の島を見たい、そんな想いから今回の旅は始まった。

高松港を出港した「なおしま号」。デッキの上から瀬戸内海に広がる風景を眺めてみる。
港を出港したばかりと言うのに、目の前にはもう沢山の島々が迫ってきている。
予想以上に島と島の間隔が近い。何もない大海原を行く船の旅も良いけど、こちらの航海は狭い内海に浮かぶ沢山の島々を眺めながら、そのコロコロ変わる景色を楽しみながらの航海。潮風も心地良いのだ。



さて、この【瀬戸内国際芸術祭2010】というお祭りは一体どういうものなのか。
今年の海の日:7月19日から10月31日までの105日間、 瀬戸内海の7つの島と高松を舞台に繰り広げられ、その島々の歴史や文化を生かした現代アートの祭典が「瀬戸内国際芸術祭2010」である。美しい自然と人間が交錯した瀬戸内の島々に活力を取り戻し、瀬戸内海が地球上のすべての地域の『希望の海』となることを目指し、2010年を第1回として、3年ごとの開催を目指す長期的で壮大なプロジェクトなのだ。アートと島、そしてそこに暮らす人々を全部巻きこんでしまうなんて、規模が大きすぎて想像もつかない!そもそも私、自分の部屋に友人のイラストレーターに描いてもらった似顔絵を飾って喜んでいる様なちいちゃな人間である。まずはこの祭りのアウトラインをはっきりさせないと…。そこでお話しを伺ったのは、瀬戸内国際芸術祭の総合ディレクター:北川フラムさん。
かなりインパクトのあるお帽子を被られた、お洒落な方である。おぉ…北川さんの帽子コレクションはどのくらいあるのだろう…等と、やっぱりチャイチーな事を考える井門に、北川さんは器の大きな一言を放った。

北川「僕はこのお祭りが終わった後、何を残せるのかを考えているんです。」


芸術祭を通じて島の人々に元気を取り戻したい、その一心なのだ。
しかも準備を通じて、島の人々の放つ輝きも日に日に増しているという。
古より『祭』というのは『祈り』の象徴であった。考えてみれば、祈りの先に何かがあるからこそ祭りを行うわけで、そう考えると北川さんのおっしゃる『祭りの後に何かを残したい。』という想いは、祭りの原点とも言える衝動なのではないだろうか。そして『何が残るかわからない』という点において、現代アートの芸術祭というのはぴったりなのではないか、とも思うのです。ともかく北川さんは熱い!!

そして熱いのは北川さんだけでは勿論ない。この祭りに携わる地元の方々もとにかく熱くて、 本当に楽しそうなのだ。瀬戸内国際芸術祭をボランティアでサポートする団体『こえび隊』はその代表格!
僕らはこの『こえび隊』で活動する、甘利彩子さんにもお話しを伺う事が出来た。


『こえび隊』とは『瀬戸内国際芸術祭2010』の開催までをお手伝いする、サポーター団体。
その活動はほんっとに様々で、島々の掃除、草刈り、田植え、アーティストの活動補助、etc.
とにかくありとあらゆる事が仕事になる得るので、目まぐるしい日々だと言う。しかも『こえび隊』には、 年齢制限も職業制限も住まいも、一切の制限がなく【なりたいと、思ったその日に、こえび隊】なのだ。

島々に暮らすお年寄りを元気にしたい、そんな想いから長寿の象徴として祝いの膳に供される『こえび』を名前に取った『こえび隊』。まさに『こえび』の様に、今日も瀬戸内の島をピチピチ跳ねまわっている。

甘利さんは元々香川の方では無いという。数年前にこの地に来て、ここに住む人たちの心に触れ、 いつの間にか『こえび隊』の中心メンバーとして、この土地を盛り上げる祭りをサポートする側にいたのだそうだ。目をキラキラさせながら祭りの準備の楽しさを語る甘利さんは、何だかとても清々しい。

北川さんが祭りの後の事に想いを馳せているとしたら、甘利さんは祭りが行われるまでの日々を全力で駆け抜けている。そんな想いが実ってか、『こえび隊』に参加するボランティアスタッフの数も数百名規模に膨れ上がっているのだとか。とは言え、サポーターは随時募集しているそうなので、アナタも『こえび隊』の一員として、お祭りまでの日々を全力で駆け抜けてみては??

さて、フェリーで直島港に入ると、我々の目に水玉模様の赤いカボチャが飛び込んでくる。
さらに港には「海の駅・直島」という、なんとも近未来的な建物までもが迎えてくれる。



赤いかぼちゃは草間彌生さんの作品と言うし、海の駅・直島の設計は妹島和世さんだと言うではないか!?
島の周囲およそ16キロの小さな島の入り口に、いきなり世界的に有名な作家の作品が出迎えてくれる直島。
実はこの島では1980年代から、あのベネッセコーポレーションがアート活動を展開していたのだ。
総称して『ベネッセアートサイト直島』という。


美術館とホテルが一体となった【ベネッセハウス】。 
島内の本村地区にある【家プロジェクト】などが挙げられるのだが、まず我々が向かったのは【ベネッセハウス】である。ベネッセハウスのコンセプトは「自然・建築・アートの共生」。ベネッセハウスをと入り巻くほぼ全てのエリアは、例えば浜辺まで、芸術作品の展示スペースとなっているから驚きだ。確かに大きな窓から見える外の景色の中に、当たり前の様に作家の作品がインスタレーションとして展示してある。
聞けばこうした作品のほとんどは、作家がここで製作したものだそうだ。それだけこの土地で、作家達は感じる所が多いという事なのだろう。ベネッセハウスの副総支配人:清水かほるさんにお話しを伺った。



現在は直島で暮らす清水さんも、この島の雰囲気と暮らす人々の気質を愛しているという。
ベネッセの取り組みは、この島で暮らす人々の気持ちもアートに近付けた様で、 海外からのお客さんに詳しく現代アートの説明をする島民や、おじいちゃん・おばあちゃんまでもが、 普通にアーティストの名前を口にするようになっているのだとか…。凄いぜ、直島。
今まで島の歴史や文化の中で育まれてきた、自然や建物、そしてそこで暮らす人たちの心。
それを大切に大切に残しながら、新たな物を生み出していく。
ベネッセホールディングス取締役会長の福武 總一郎氏の理念でもある『ある物から、ない物を作りだす』という志をしっかりと打ち出し、実現しているのだ。
この日は、柔らかな木の温もりを感じるフロントホールから、大きな木製の階段を抜け、ホールでお話しを伺ったのだが、そのホールから見渡す瀬戸内の海と、アーティストの作品、そして直島の緑の美しかったこと…。しっかりと敷地内にある草間彌生さんのもう一つの『黄色いかぼちゃ』で写真を押さえ、続いて我々が向かったのは【家プロジェクト】である。


【家プロジェクト】とは直島の本村地区にある、古民家をアーティストの作品にして展示するインスタレーション。この場所の雰囲気と、元から存在する古民家を生かして、全て丸ごと作品にしてしまおう!という試みなのです。本村地区に車で到着した我々は、観光に来ている若者と外国人の多さにまず驚く…。
改めて世界中から注目される町と再認識するわけですが、それにしては町並はのどか。だからこそ、そのギャップが面白い。焼杉の壁板は独特の黒味を帯び、白壁とのコントラストが絶妙な雰囲気を醸し出している。屋根は勿論、瓦屋根。この風情はまるで江戸の昔にタイムスリップしたかのようだ。
お話しを伺ったのは【家プロジェクト】担当スタッフ:猪原秀明さん。猪原さんにこの町並をのんびり歩いて案内していただきながら、丸ごと家一軒が作品の【家プロジェクト】を探っていった。



この【家プロジェクト】でアーティストの手にかかった古民家、本当に今でも人が住んでそうな家なもんだから、うっかりすると見過ごしちゃいそうなものもある。もちろん【はいしゃ/大竹伸朗氏】の作品のように、一見して「これは作品だ!!」ってのもあるのだけど…。でも当たり前の日常の中にある非日常だからこそ、ひときわ魅力的に見えるのかもしれないなぁ。例えば家の蔵の内部に滝を描いた【石橋/千住博氏】。
音もなく、暗い部屋の壁一面に描かれたモノクロの滝。近くで眺めると、滝の音が耳の奥で「どうどう」と聞こえてくるかの様。神々しささえ感じる事が出来る。今回は駆け足で取材をしたのだけれど、ここはゆっくりと長い時間をかけて見て回るべき場所なのだろう。1日に18組しか見る事が出来ない作品もある。しかも作品と対峙するのは一人だけ。1作品1人。与えられた時間は15分。作品を眺めるだけの贅沢な時間。こちらは予約制なので、興味のある方はぜひ。って言うか、今度来たら必ず見にいきたい!!


すっかりとアートづいたYAJIKITA feat.井門の一行であるが、続いて我々を待っていたのは、 そう!!『地中美術館』である。この美術館は財団法人「直島福武美術館財団」が出資し、2004年に建てられた私立の美術館。設計はあの安藤忠雄。直島の山の中腹に、それこそ地中に埋められた形で存在する『地中美術館』。すでにそこにある事自体、存在自体が、作品となっている様な雰囲気ではあるが、勿論この中には作品が収蔵されており、数多くの来館者で賑わっている。しかしその姿は、周りからの接触を拒む様な、 静かに周りの自然と同化している様な雰囲気を醸し出している。しかし驚くのはこの外観だけではない。
何とこの美術館には、3アーティストの作品しか展示されていないのである。前々から噂には聞いていたのだが、安藤忠雄建築で展示アーティストも3人。一体どんな世界が広がっているのか!?


案内して戴いたのは、財団法人直島福武美術館財団 広報担当:川浦美乃さん。
美術館内部は写真も収録も勿論NG。そこは感じるままに、見る人の心に委ねる、といった所だ。
展示されている3アーティストは『ウォルター・デ・マリア』『ジェームズ・タレル』『クロード・モネ』。
それぞれが作品を際立たせる部屋に配され、その世界の深さを演出している。
ここで上手に紹介出来ないのがもどかしいのですが、正直言うとですね、僕はモネの睡蓮が5枚飾られた部屋で少し泣きましたよ。モネの部屋は靴を脱いで入るんですね。靴を脱いで一歩部屋に足を踏み入れると、床に広がるモザイクにまず目が行きます。一面真っ白な床は、何と全て大理石。2cm角に切り出した大理石を70万個敷き詰め、うすく光が取り込まれた真っ白な部屋に、モネの睡蓮が5枚。色はそれだけ。
モネの作品だけではなく、その全体の雰囲気に身を委ねられるっていうんですかね、安藤建築の緊張感の中に一瞬だけ見せる母性のような。不思議な安心感と感動と衝撃と…。とにかく涙が出るわけです。32歳でもまだ絵を見て泣ける感性が残っていたんだって、そちらの方が自分の中では発見でした。まだ枯れてなかった(笑)その衝動はウォルター・デ・マリアの部屋でも起こったわけで…。川浦さんに『音が反響しますので、大きな声を立てない様にお願いします。』と言われ、注意深く小さな入り口を入ると、そこに広がったのは物凄く広い空間。そして目の前には、なだらかに伸びる階段が。その丁度真ん中にある、巨大な巨大な、球体。人によって様々な印象を持つでしょうが、僕はある種の墓場の様な印象を受けてしまいました。それは悲しみを湛えた物と言うよりは、何かの碑の様な。その場所でしばらく動けなかった。改めて美術はダイレクトに人の心を動かすんだと実感。





現代アートの島、直島のアートを探る旅。
直島はまさに島全体がアートだった。一つの作品の様だった。
そして瀬戸内国際芸術祭への盛り上がりも凄かった。

総合ディレクターの北川フラムさんの想いは、祭りの後に何を残せるかという所に向かっていた。
『こえび隊』の甘利さんはとにかく楽しそうに祭りへの意気込みを話してくれました。
心を刺激するアートは人の気持ちも元気にさせる。

今回の直島の『アートを探る旅』は、終わってみれば『直島の元気を探る旅』になっていた気がします。

何度も言うようで恐縮ですが、本音を言うと、もっとゆっくりと見たい。
もっともっとゆっくりと過ごしたい。

これからの準備期間を経て、この小さな島々から発信される『瀬戸内国際芸術祭』が、 世界に向けていったいどんな大輪の花を咲かせるのか?
2010年夏に咲くその花の色を楽しみに待ちましょう!