取材日 3月21日(月) 晴れ 牛嶋俊明

DJ牛嶋、春の笠岡諸島を旅する〜真鍋島編〜

     
 
白石島で迎えた朝は実にさわやかだった。

朝食後、すぐに砂浜に出たが、朝の景色のなんと美しい事。

『民宿はらだ』の目の前は海が広がっているが、その輝きは言葉にならない素晴らしさだった。
風も心地よく、鳥も気持ちよさそうに飛んでいた。

昨日渡った無人島も太陽の光を浴びていて、

『とにかくまた遊びに来たい!』

それが白石島を後にする際の感想だ。
思えば取材前、

『島の良さはなんですか?』

と原田さんに伺ったが、

『島で1日過ごした人の顔を見てもらえば分かりますよ』

との事。その言葉を思い出してすぐにスッフの顔を見たが、みんなとても良い表情をしていた。
外見上だけでなく、心までもがキレイになったのでは?そんな気がした。

原田さんは白石島港まで一緒に来て見送ってくれた。別れ際に握手をしたが、原田さんの手から

『また、来て下さい』

という無言のメッセージが伝わってきた。
そして船が港を離れる際、ずっと手を振ってくれていたが、原田さんの姿が小さくなっていくのを見ながら、

『またここに来ますからね』

そう心からメッセージを返して白石島を後にした。
白石島を後にして、次に目指すのは真鍋島だ。

船の中で『島おこし海援隊』の守屋基範さんと合流したが、守屋さんには真鍋島をご案内頂く事になった。

『島おこし海援隊』は、平成13年に発足した笠岡市長特命の組織で、海や島で生活している住民をサポートする部隊である。毎日各島を周って島民と協働し、島民の1人となって活動しているが、その活動は昼夜を問わないという。

船内ではたくさんの島民に話しかけられていた守屋さんだが、そのフレンドリーな接し方に、島の人達と良い連携を取って仕事に臨んでいる事がよく分かった。

白石島から真鍋島に向う際は、笠岡諸島で一番大きい北木島の横を通る。
家の立ち並び方を見て、この島にもまた違った暮らしがある事を感じさせた。

京都から移り住んだ夫婦がレストランを経営していると聞いているので、今度は是非降りて取材をしてみたいものである。

さて、白石島から船に乗って約20分。待望の真鍋島に到着した。

白石島が瀬戸内海の真ん中なら、真鍋島はやや香川寄り。その影響なのか言葉は、笠岡よりも香川に近いと言う。

真鍋島港を降りて、まず最初に目に飛び込んできたのは古い町並みだ。

木造の民家が軒を連ね、路地もレトロ感たっぷり。船板を張った家屋、石積みの防波堤、昭和初期に建てられた真鍋島漁協には、漁業で栄えたこの島の歴史がいっぱい詰まっている気がした。

また、“古い漁村形態を今に伝える島”として岡山県のふるさと村に指定され、数多くの映画やテレビのロケ地としてもお馴染みである。中でも故・夏目雅子さん主演の映画『瀬戸内少年野球団』は特に有名で、港近くの『JA喫茶』には、ロケ時に撮影された写真が多数展示されていた。

『うぉ〜、夏目雅子さんも降り立ったこの島に俺も来ているぅ〜』

と興奮してしまったが、とにかく真鍋の旅も期待大だ!
まず最初に向ったのは、狭い路地を入ってすぐの場所にある島の旧家・真鍋礼三さんの自宅だった。

その昔、先祖が島の領主だったという名家だが、ここには笠岡市の天然記念物にも指定されている樹齢250年のホルトノキがある。
熱帯亜熱帯性の常緑樹で、高さは15メートル、目通りの幹回りは約2.4メートル。庭と家の間に噴き出しているように立っていたが、夏には小さな花をつけるらしい。

真鍋礼三さんがとてもユニークな解説をしてくれたが、ホルトノキには古くからの言い伝えがあるらしい。

家伝によると、宝暦年間(1751年〜1964年)、発明で知られる平賀源内が、師から得た苗木を高松藩に献上。それが丸亀藩から讃岐地方の大庄屋の手に渡り、真鍋家へ送られたという。
一方で元々自生していたという説もあるらしいが、真鍋さんは

『夢が膨らむでしょう』

と平賀源内説を主張していた。

そして驚くのは、ホルトノキに耳をかざしてみると神様の音が聞こえるという事。でも、相当心を落ち着かせないと聞けないそうで、早速試みた牛嶋の耳に音は聞こえず。残念!
しかし、真鍋さん自身も聞いた事がないらしく、

『お互い、俗物らしいですな〜ははは』

と真鍋さん。80歳を超える年齢には見えなかった。
とにかく元気である。
真鍋家を後にして、昼食は港のすぐ目の前にある漁火(りょうか)で取る事にした。

大将の山下増石さんは元漁師。店ではもちろん新鮮な海の幸を食べる事が出来るが、メニューはおまかせ料理のみ。
昼食ということで1000円コースを注文したが、内容は1000円とは思えないほど盛りだくさんだった。

料理をいくつかピックアップすると、まずはタコの活造り。箸ですくって食べようとしたが、底に吸盤がくっついて思うようにすくえず。
やっとすくえたと思ったら、今度は舌にはりついて、とにかく活きが良すぎである。

その他、塩茹でしたイシガニも印象深い。カニ自体がさほど大きいものではないので身を取り出すのに少々手間がかかったが、ほんのりと甘みがあって美味かった。
そしてタコのてんぷらも最高!

『これ、ホントにタコ?』

と思わせるくらい実が柔らかかった。
その他にもいろいろあったが、最後はご飯とイシガニ入りの味噌汁で締め!昼食とは思えない贅沢ぶりだった。
でも、今度は時間を気にせずにゆっくり行きたいものである。もちろん、お酒を飲みながら。
昼食後は真鍋島を離れ、属島である真鍋島大島に向かう事にした。

大島には、県の天然記念物に指定されている幻の巨木『イヌグスの木』があるが、幻と言われるのには理由がある。

大島は無人島だが、以前は島内に畑を持つ人が頻繁に渡っていたらしい。しかし、ここ数10年は渡る人がいなくなり、道にも雑草が生い茂ってアクセスも困難、その存在を知らない人が多くなったとの事。
しかし、地元の人が

『みんなで見に行こう』

と道を整備して、今では新たな観光名所になったそうだ。

イヌグスは、タブノキの別名で、主に西南日本の海岸沿いに分布する常緑樹である。
定期船がないので、『ふるさと村』の村長に船を出してもらったが、船は10人乗れるか乗れないかの小さな船。でも、海の水に直接触る事が出来て、これはこれでスリル感があって良かったのかも。

みんな静かに乗っていたが、もしかしてこれは恐かったからか?いや、天気も良く、波も穏やかで、気持ち良かったからでは?きっと自分の世界に入り込んでいたのだろう。
瀬戸内海の綺麗な景色を見ながら20分ほどで真鍋島大島に到着した。

無人島なので当然桟橋がなく、岩場に船を着けたが、冒険に来たみたいでウキウキしてしまった。そのまま冒険に出発・・・ではなく、さっそく山登り開始。

傾斜の激しさに、

『よくこんな道を整備したなぁ。雑草の刈り取りはさぞかし大変だっただろう』

と思ったが、地元の方が何度も通って整備した道らしい。
その努力には本当に頭が下がったが、登り始めてから約10分後、待望の『イヌグスの木』を発見した。
『おおっ、凄い!』

と近づいて行くが、木は傾斜がある地面に生えていて、慎重に歩を進めないと転げ落ちるような危険な道になっていた。
根元付近から2株に分かれていたが、その幹回りの大きい事。大きい方約7メートル、小さい方でも約4メートルはあったのではないだろうか?
そこからさらに分かれていて、イヌグス1本だけでひとつの森を形成しているという感じ。樹齢は約400年と推定されているが、その歴史の重さと規模の大きさには本当にびっくりした。
是非、これは生でご覧あれ!

なお、大島に渡る船便はないが、真鍋で漁船を持っている方に

『大島に行きたい』

と現地で頼めば、連れてってもらえるかも!との事。

大島から小船で真鍋島に戻り、次に向かったのが真鍋小学校だ。

狭い路地を縫うように歩いて到着したが、ここは故・夏目雅子さん主演の『瀬戸内少年野球団』で使われた場所だ。

『よくぞ、ここでやってくれた。ありがとう!』

と言いたいが、今度ビデオを借りて改めて見てみたいものである。

さて取材に行った日は休日だった。そうすると子供たちの声が聞こえないのか?と思いきや、なんと!子供たちは学校で課題に取り組んでいた。原田聖子先生の指導の元、子供たちは一生懸命だったが、

『将来は何になりたい?』

と男の子に質問すると、

『お父さんと同じ漁師!』

とキッパリ。お父さんの仕事ぶりを見て、早くも漁師を天職と位置づけているようだった。
面白かったのは

『好きな魚は?』

と聞くと、みんな口を揃えて

『鯛!』

と答えていた事だ。思わず、

『君達はいつもそんなに美味い魚を食べているのか?』

と突っ込んでしまったが、素晴らしい自然環境の中で学ぶ子供たちの目は本当に輝いていた。
そして最後は宿泊先の三虎旅館へ。

場所は真鍋島港から山を越えた反対側にあるが、すぐ目の前には海水浴場があり、展望台まであったのには驚きだった。
親子3代が寅年という事で三虎と名づけたそうだが、旅館を切り盛りしているのが若旦那の久一博信さん。とても明るく行動的で、旅館周辺のログハウスや海水浴場の更衣室などは、全て自ら作ったものらしい。
そしてこの度、露天風呂も完成し、我々が宿泊した時は試験運用中だった。
水は海から引いて、窯に薪をくべて沸かせていたが、

『40度になるのに4時間もかかってしまう』

と苦戦しているようだった。でも、日々、沸く時間が短縮されているとの事。
そして、やっと沸いた頃に、旅館専用の桟橋に海上タクシーの姿が・・・。数人が降りてきて早速お風呂に入っていたが、観光客ではなく、風呂だけ入りに来た地元の方だという。
風呂は大人3人が入れるほどの広さだが、海に面した場所にあって、夜は星を見ながら入れるなんて最高の気分だろう。
よし!後で入ろう。
食事は旅館の大広間で。

刺身、煮魚、揚げ物、牡蠣など旬の魚介類をふんだんに使っていたが、どれもこれも美味で満腹。食べきれないほどの量だった。昼に食べたイシガニも出ていたが、これはまさに今が旬なのだろう。

食事の後はさきほどの露天風呂へ。辺りは既に真っ暗になっていたが、星を見ながらの風呂は最高だった。
こうして真鍋で過ごした1日が終わった。

今回は『春の笠岡諸島を旅する』と題してお送りしたが、楽しかった!というのが率直な感想だ。
見るもの全てが

『凄い!』『素晴らしい!』

の連続で、普通に生活していると分からないものが多数あったような気がする。

そして何よりも島の人達が素晴らしい。今回、無事に取材を終える事が出来たのは、島民のみなさんのおかげす。

本当にありがとうございました。